読む宝石学『宝石と工具、どちらが硬い?』(月曜定期便77)

今回のテーマで一番伝えたいことは、

作り手は「宝石に注意すべし」ということです。

宝石を扱う私たちは、石を美しく見せることだけでなく、「傷つけない」「割らない」ことも大切な仕事です。

石留めをするとき。

工具が当たるとき。

完成したジュエリーをお客様が毎日身につけるとき。

宝石には、「擦る力」と「ぶつかる力」の両方を考える必要があります。

そのために知っておきたいのが、「モース硬度」と「靭性」です。

代表的な宝石と鉱物のモース硬度

硬度鉱物・宝石名身近なものの目安
10ダイヤモンドダイヤモンドの工具
9ルビー、サファイア(コランダム)サファイアガラス(腕時計の風防) 
紙ヤスリ(硬度 9.0 〜 9.5)
研磨剤
8.5アレキサンドライト
8トパーズ、スピネル硬質ガラス
7.5エメラルド、アクアマリン鋼鉄のやすり
7水晶(クォーツ)、アメジスト、ガーネット落ちている石・砂粒(石英)
6.5ペリドット、翡翠(硬玉)ステンレス刃物
6ムーンストーン、トルコ石
5.5オパール普通の窓ガラス
5アパタイト歯のエナメル質
4フローライト(蛍石)、真珠鉄 4.5
Pt900 4.3
K18  4.0〜4.5
純プラチナ  4.0 〜 4.5
3カルサイト(方解石)銅貨(10円玉)3.5
2ジプサム(石膏)人間の爪 2.5
SV925  2.5 〜 3.0
純金・純銀 2.5
1滑石(タルク)チョーク

(モース硬度は1〜10の数字で表されますが、数字の差がそのまま硬さの差ではありません。例えば、ダイヤモンド(10)はコランダム(9)より「1だけ硬い」のではなく、実際には大きな差があります。)

 上の表を見ると、「どの工具なら宝石を傷つけてしまうのか」「どの金属なら石を傷つけにくいのか」が見えてきます。
そして貴金属の傷つきやすさも納得です。
逆をいえば、貴金属の枠は石を傷付けずに石留め出来ます。むしろ工具や石留めの力加減が、石を割ってしまう原因となります。

一方、貴金属にも「硬さ」という考え方があります。
貴金属については、割金を加えることでビッカーズ硬度が増して耐久性が良くなり、ジュエリーとして使用できる(形を維持できる)ようになります。

モース硬度だけを見ていると、「硬い石ほど丈夫」と思ってしまいがちですが、実際にはそうではありません。
硬度の他に覚えて欲しい性質には「靭性(じんせい)」というものがあります。

    靭性とは「割れたり欠けたりしにくい性質」で、衝撃への強さと言い換えてもいいでしょう。

    代表的な例が、翡翠(ヒスイ)です。
    翡翠はモース硬度こそダイヤモンドほど高くありませんが、とても丈夫です。

    この違いは、「硬さ」ではなく「結晶のつくり」に秘密があります。
    古くから彫刻などの美術工芸品・調度品に使われてきた理由でもあります。

    次回はその「結晶のつくり」に注目したいと思います。

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