読む宝石学『原石の形を知ると、カット石を見る目も変わる』(月曜定期便76)

前回は、宝石の内部には規則正しい原子の並びがあり、割れやすい方向(劈開)があることをご紹介しましたね。^^

では、結晶が成長したら、どのような形になるのでしょうか。

それぞれの結晶にはそれぞれ特徴的な形があり、この外側の形を「結晶形」と呼びます。

結晶系と結晶形は違う

結晶系は、原子の並び方を分類したもの。
結晶形は、実際に成長した結晶の外側の形です。

同じ結晶系でも、成長環境によって形は変わりますが、その宝石らしい特徴は残っています。

宝石ごとの代表的な結晶形

ダイヤモンド→ 八面体
ガーネット→ 菱形十二面体
水晶→ 六角柱
エメラルド(ベリル)→ 六角柱
ルビー・サファイア(コランダム)→ 樽形や六角柱状
トパーズ→ 柱状結晶

写真や図解があると解りやすいと思いますが、書物の図面使用は著作権侵害となるので
お手元の宝石の本を見てくださいね。

※宝石の本は必ず1冊は入手しましょう。

「結晶形でカットが決まる」ではなく、「結晶形を生かしたカットが選ばれることが多い」

現在ではレーザー加工や3Dスキャンなどの技術が発達し、原石の形だけでなく、内包物や重量も考えながら最適なカットが選ばれます。

そのため、「必ずこの結晶形ならこのカット」というわけではありません。

「歩留まり」という考え方

ダイヤモンド(八面体)ラウンドブリリアント八面体の面を利用すると歩留まりが良く、対称性も取りやすい。
ダイヤモンド(マクレ) トリリアント三角形の双晶なので、三角形の輪郭を生かしやすい。
水晶(六角柱)エメラルドカット、オーバル、ファンシーカット柱状結晶を長手方向に利用しやすい。
ベリル(六角柱)エメラルドカット長い柱状結晶を効率よく生かせるため。
トルマリン(柱状)バゲット、エメラルド、オーバル細長い原石に合わせやすい。
トパーズ(柱状)オーバル、ペア、エメラルド長い結晶を利用し歩留まりを上げる。
ガーネット(菱形十二面体)ラウンド、クッション 比較的塊状なので自由度が高い。
スピネル(八面体)ラウンド、クッション ダイヤモンドほど制約がなく、原石に合わせて選ばれる。

宝石の原石は高価です。そのため研磨職人は、美しさだけでなく「どれだけ重量を残せるか(歩留まり)」も考えながらカットを決めます。結晶の形を生かしたカットが多いのは、その方が無駄なく美しい宝石を作れるからです。

ダイヤモンドには「マクレ」と呼ばれる三角形の双晶があります。この形は、トリリアントカットなどの三角形の宝石に加工されることが多く、原石の特徴をうまく生かした例の一つです。

ジュエリーショップに並ぶ宝石は、ただ美しく研磨されているだけではありません。
そのカットには、自然が育てた結晶の形を生かそうとする、研磨職人たちの知恵が詰まっています。

宝石を見るとき、ほんの少しだけ「この石は、もともとどんな形で地球の中に育っていたのだろう」と想像してみてください。カットの見え方が、少し変わってくるかもしれません。

ジュエリー作家にとってなぜ大切?

結晶形や劈開を知ることは、宝石を美しく仕立てることにもつながります。

石によっては、力をかける方向を間違えると欠けたり割れたりすることがあります。
だからこそ、どのような留め方が適しているのか、どんなデザインなら宝石に無理をさせないのかを考えることが大切です。

宝石を理解することは、その宝石の魅力を引き出し、長く楽しんでいただくための第一歩なのです。

どうでしょう。
宝石を眺めるとき、少しだけ見え方が変わってきた気がしませんか?^^

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