今回のテーマで一番伝えたいことは、
作り手は「宝石に注意すべし」ということです。
宝石を扱う私たちは、石を美しく見せることだけでなく、「傷つけない」「割らない」ことも大切な仕事です。
石留めをするとき。
工具が当たるとき。
完成したジュエリーをお客様が毎日身につけるとき。
宝石には、「擦る力」と「ぶつかる力」の両方を考える必要があります。
そのために知っておきたいのが、「モース硬度」と「靭性」です。
代表的な宝石と鉱物のモース硬度
| 硬度 | 鉱物・宝石名 | 身近なものの目安 |
| 10 | ダイヤモンド | ダイヤモンドの工具 |
| 9 | ルビー、サファイア(コランダム) | サファイアガラス(腕時計の風防) 紙ヤスリ(硬度 9.0 〜 9.5) 研磨剤 |
| 8.5 | アレキサンドライト | |
| 8 | トパーズ、スピネル | 硬質ガラス |
| 7.5 | エメラルド、アクアマリン | 鋼鉄のやすり |
| 7 | 水晶(クォーツ)、アメジスト、ガーネット | 落ちている石・砂粒(石英) |
| 6.5 | ペリドット、翡翠(硬玉) | ステンレス刃物 |
| 6 | ムーンストーン、トルコ石 | |
| 5.5 | オパール | 普通の窓ガラス |
| 5 | アパタイト | 歯のエナメル質 |
| 4 | フローライト(蛍石)、真珠 | 鉄 4.5 Pt900 4.3 K18 4.0〜4.5 純プラチナ 4.0 〜 4.5 |
| 3 | カルサイト(方解石) | 銅貨(10円玉)3.5 |
| 2 | ジプサム(石膏) | 人間の爪 2.5 SV925 2.5 〜 3.0 純金・純銀 2.5 |
| 1 | 滑石(タルク) | チョーク |
(モース硬度は1〜10の数字で表されますが、数字の差がそのまま硬さの差ではありません。例えば、ダイヤモンド(10)はコランダム(9)より「1だけ硬い」のではなく、実際には大きな差があります。)
上の表を見ると、「どの工具なら宝石を傷つけてしまうのか」「どの金属なら石を傷つけにくいのか」が見えてきます。
そして貴金属の傷つきやすさも納得です。
逆をいえば、貴金属の枠は石を傷付けずに石留め出来ます。むしろ工具や石留めの力加減が、石を割ってしまう原因となります。
一方、貴金属にも「硬さ」という考え方があります。
貴金属については、割金を加えることでビッカーズ硬度が増して耐久性が良くなり、ジュエリーとして使用できる(形を維持できる)ようになります。
モース硬度だけを見ていると、「硬い石ほど丈夫」と思ってしまいがちですが、実際にはそうではありません。
硬度の他に覚えて欲しい性質には「靭性(じんせい)」というものがあります。
靭性とは「割れたり欠けたりしにくい性質」で、衝撃への強さと言い換えてもいいでしょう。
代表的な例が、翡翠(ヒスイ)です。
翡翠はモース硬度こそダイヤモンドほど高くありませんが、とても丈夫です。
この違いは、「硬さ」ではなく「結晶のつくり」に秘密があります。
古くから彫刻などの美術工芸品・調度品に使われてきた理由でもあります。
次回はその「結晶のつくり」に注目したいと思います。
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