チェーン切れは、特に多い修理依頼のひとつです。
チェーンが切れるのは「使い方が悪い」だけではありません。
構造上の弱点や、経年変化、デザインによる要因もあります。
その「原因」と「予防法・対処法」を整理して紹介します。
― 修理依頼の多い箇所と原因を理解しよう ―
1.切れやすい箇所とその原因
▸ 丸カン・引き輪付近
最も多いのが「エンドパーツ付近」です。
引き輪の操作による繰り返しの動き、衣服との摩擦、金具のねじれなどが原因になります。
特に線径が細い丸カンや、ロウが片側に偏った接合は、金属疲労で割れやすくなります。
丸カン・プレート接続部をロウ付けしないのは、はチェーンそのものが切れることを防ぎますので、ロー付けされていないことが悪いわけではありません。ただ、丸カンが開いてチェーンがすり抜けることがよく起こります。
▸ チェーン本体(中間部)
使用による摩耗が主な原因です。
一見丈夫でも面同士がこすれて徐々に薄くなることがあります。
貴金属などの軟らかい素材は、長期間の使用で、最終的に切断に至ることもあります。
▸ チャーム取り付け部
チャームの重さや可動範囲とのバランスが取れていないと、中央に負担が集中します。
小さなカンで吊るすデザインは特に注意が必要です。チャームの重量とチェーンの太さ・強度のバランスを確認しましょう。
2.チェーンの構造による弱点
ベネチアン( 面が多く滑らかだが 曲げに弱い、折れることがある)
ボールやカットボール( 接続部が弱い 接合部がゆるみやすい)
スクリュー (ねじれが加わり 歪みから金属疲労が進む)
構造を理解すると、デザイン段階で「どのチェーンをどのパーツに合わせるか」の判断がしやすくなります。
3.切れを防ぐための制作・修理のポイント
ロー付け箇所は確実に密着させる
線径選びはチャーム重量に応じて
具体的には目安として、3gを超えるトップには1.2mm以上の幅が安心。
近年、重量減らしのため華奢なものが多いので、磨きや仕上げの段階で摩耗を進めない
チェーンは研磨しすぎないように。
4.修理時の注意点
切断面を観察し、素材劣化か構造欠陥かを見極める。
メッキされたチェーンは火を使うとメッキが焼けてしまうので、再メッキ前提で修理するか、交換提案も検討する必要があります。
微細チェーン(ベネチアン・カットボールなど)は、部分ロー付けより全交換の方が結果的にきれいな場合が多い。
5.まとめ
チェーンの切断は、「構造と使用環境の影響の積み重ね」です。
修理の際に原因を正しく把握できれば、お客様に対して「なぜ切れたのか」「今後どうすれば防げるのか」を明確に説明できます。
ジュエリー制作は、強度と美しさのバランスの上に成り立つもの。
構造理解を深めることで、トラブルを未然に防ぎましょう。
ユーザーの皆さんへのお願い
①切れを防ぐためのポイント
着けっぱなしにしない(寝る時・スポーツ・入浴時など)
チャームとのバランスをとる(重量に合った太さにする)
定期的な点検を(留め具・丸カンの摩耗チェック)
絡まった時は無理に引っ張らない
修理は専門家へ(ロー付けやチェーン交換など)
②もし切れてしまったら
無理に自分で繋がない(細線は折れやすい)
種類によっては修理が出来ない状況もありえることをご理解ください。
チェーンは「消耗品」ではあるけれど、正しい使い方で寿命を延ばせます。
お気に入りのジュエリーを長く保つために、定期的なお手入れをお勧めします。
以下の過去記事も参考にどうぞ😊
あずきチェーンについて(月曜定期便6)
チェーンのロウ付け(月曜定期便12)
“つけっぱなしOK”の落とし穴(月曜定期便22)
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