今回は素材の変遷について超短で書きます。
宝石について学ぶ「宝石学」とは、宝石を科学的に識別する学問です。地質学や鉱物学などの地球科学の一分野に含まれます。学問としては歴史的に新しい分野です。
「宝石学」が必要になった理由。それは、合成宝石や養殖真珠の普及が背景にあります。
◆合成石の登場
1873年フラックス法合成ルビー
1902年ベルヌイ火炎溶融法合成ルビー
その後、合成サファイア、合成エメラルドなどが次々に、ジュエリー市場に登場
1960年代以降、大量生産が可能になり、合成石が一般市場にも広まる
◆養殖真珠の登場
20世紀初頭、日本で養殖真珠の技術が確立される
天然真珠は希少でごく限られた富裕層向けのものでしたが、養殖技術により安定供給が可能になり
1920年代以降、ヨーロッパ市場で本格的に流通し、高級ジュエリーにも使われるようになる
それ以前は、希少な天然由来の宝石が主流で、そうでないものは価値のないモノとみなされていました。
見分けることが難しいこれらを鑑別する必要性が高まり、19世紀以降、科学的な分析技術が発展し、FGA(英国宝石学協会)、GIA(米国宝石学会)などの専門機関が誕生したのです。
しかし、近年は合成ダイヤモンドもジュエリーに参入し、合成石に対する考え方も「エシカル」へと変化しています。
◆エシカルな宝石といえば、環境や人権に配慮された方法で採掘・製造されたものを指します。
例をあげると、
ラボグロウンダイヤモンド(Lab-grown Diamond)
– 天然ダイヤモンドと化学的・物理的に同じだが、人工的に作られた合成石。
– 採掘の必要がないため、環境破壊や労働問題を回避できる。
モアッサナイト(Moissanite)
– ダイヤモンドに似た輝きを持つ合成石。
– 採掘不要で、価格も手ごろ。
合成ルビー・サファイア・エメラルド
- 天然石と同じ成分で作られるが、紛争鉱物の問題がない。
- 価格が抑えられ、持続可能な選択肢として注目されている。
リサイクルダイヤモンド
- 古いジュエリーや中古のダイヤモンドを再利用する。
- 新たな採掘を必要とせず、環境負荷を軽減。
リサイクルゴールド / プラチナ
- 既存のジュエリーや電子機器から回収し、精製して再利用。
- 「都市鉱山」とも呼ばれ、持続可能な資源活用に貢献。
トレーサブル(産地が明確な)天然石
カナダ産ダイヤモンド
- 採掘から加工までの過程が厳しく管理されており、環境基準や人権保護が徹底されている。
- 紛争ダイヤモンド(ブラッドダイヤモンド)ではないと保証される。
オーストラリア産サファイア
- 環境への影響を抑えた採掘方法がとられている。
- 労働者の人権も守られており、フェアな取引が行われている。
最近では、エシカルジュエリーへの関心が高まり、多くのブランドが環境に配慮した素材を採用しています。
以上が、ジュエリーの素材の変遷ですが、特筆すべきことがあります。
ジュエリーは物質的な素材だけではなく、「心」が大切にされています。
大切な記念のもの、代々受け継がれたもの、お守り的なもの。。。
素材を大切に扱うことが、心を大切にすることにつながるのがジュエリーです。
宝石は、「美しく」「希少」かつ「耐久性のあるもの」という条件がありますが、身に着けるためには「耐久性」は重要です。
石の研磨技術が向上し、マニアも増え、脆い石もカッティングされて販売されています。
素材の域がどんどん広がり、素材の耐久性を理解しないままに加工することの危険性が生じています。
例)きれいなレア・ストーンではあるが、実は硬度がものすごく低い。
→ジュエリーには不向き。この場合は観賞用にとどめておくべき。
「大切な」ジュエリーに耐久性は必須条件ですので、永く身に着けるものほど素材について調べて、適切な扱いをする必要がありますので、どうぞご注意ください。
作り手さんは、宝石に関する本を1冊は読みましょう。
自分で勉強するのが苦手な方は、作り手のための「宝石講座」、マンツーマンで開講しますのでどうぞご利用ください。^^
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