さて、先日から薬品の話が続いていますが、
金属を扱う人が、素材・薬品・身体・食品・工具との関係を考えるための知識としての、
「酸性・中性・アルカリ性」を、制作の現場から見てみましょう。
これは、理科で習った「水溶液の性質」です。
そして実は、ジュエリー制作のあらゆる場面に関係する知識でもあります。
酸性・中性・アルカリ性とは?
| 性質 | pH | 身近なもの・薬品の例 | 貴金属加工との関係 |
| 強い酸性 | 低い | 希硫酸・硝酸など | 酸洗い・金属表面の処理 |
| 弱い酸性 | 7より少し低い | 酢・クエン酸など | 洗浄など |
| 中性 | 7 | 純水など | 酸・アルカリの基準 |
| 弱いアルカリ性 | 7より少し高い | 石鹸・重曹水など | 酸性のものを中和するときなど |
| 強いアルカリ性 | 高い | 水酸化ナトリウムなど | 強力な洗浄・処理など |
酸性・中性・アルカリ性は、「危険度」を表す言葉ではなく、物質の性質を表す言葉です。
14段階で表され中性がpH7。強い酸性=pHが低い。強いアルカリ性=pHが高い。
身近なところでは?
ジュエリーは、人の身体、皮膚、汗と接触しますよね。
人の身体にもpHがあります
調べてみると、
血液:約7.4
胃液:かなり酸性
皮膚表面:弱酸性
汗:酸性寄りになることが多いが、条件によって変化する
というように、人間の身体は場所によってpHが違います
ただ、「汗のpHは○○」と一つの数字で断定できず、個人差があり、一般的には弱酸性~中性付近の範囲で変化します。
汗がジュエリーに影響を与えるのはなぜ?
汗などの水分には、塩分などの電解質が含まれています。
そのため、金属と接触することで、金属表面で電気化学的な反応が起こり、金属が少しずつ溶け出して金属イオンになることがあります。
こうした金属イオンが皮膚に触れることが、金属アレルギーに関係する場合もあります。
ただし、汗をかいたから必ず金属アレルギーになる、ということではありません。金属の種類や合金、接触する時間、皮膚の状態など、さまざまな条件が関係します。
また、宝石の中でも真珠は汗に弱いというのは、結構有名な話ですが、多孔質・有機質(トルコ石やサンゴなど)も、影響されやすい宝石です。
他にも気を付けるものがあります
食べ物・飲み物、洗剤や化粧品など、様々なものにこの性質があり、ジュエリーに影響を与えます。しかし、きちんとお手入れをすることで影響を最小限に押さえることが出来ますし、何が何でも触れてはいけないという事ではありませんので、神経質に制限し過ぎないようにしましょう。
「金属 × 液体 × 時間」で考えてみる
同じ金属でも、乾いた状態で触れるのと、
汗や薬品などの水分がある状態で長時間触れるのでは、状況が変わります。
ちょっと専門的に考えると、
酸性・アルカリ性
+ 水分
+ 電解質
+ 金属
+ 時間
が組み合わさると、金属の種類や条件によっては、腐食や金属イオンの溶出などが起こりやすくなります。
だから「酸性だから悪い」「アルカリ性だから悪い」ではなく、
どんな物質が、どんな金属に、どのような条件で接触するのかか関わっています。
食事に行った、飲みに行った。
その時にお酒をこぼしてしまった。
あるいは醤油がついた。などなど、日常にはいろいろなことが起こります。
知っていれば、ちょっと席を立って洗いに行ったり、対処することが出来ますね。
「金属と薬品の相性」だけではなく、「金属と工具の相性」もあります
酸洗いの時に、鉄のピンセットごと銀の作品を希硫酸にいれると、銀はピンクになります。
からげ線もそうです。
これは、「希硫酸」の項目の時にも書きましたね。
「希硫酸」ってなに?(月曜定期便83)
ジュエリー制作は、デザインや加工技術だけでなく、素材の性質を知ることも大切です。
「これはなぜ変色したんだろう?」
「なぜこの工具を使ってはいけないんだろう?」
「なぜ汗で変化するんだろう?」
そんな「なぜ?」の中には、理科で習ったことがたくさん隠れています。
理科って大切ですね。^^
コメント