制作をしていると、無意識のうちに「硬さ」を扱っています。
①削れる、削れない。
②曲がる、曲がらない。
③傷がつく、つかない。
その「硬さ」とは一体何でしょうか。
硬さには種類がある
硬さと一言でいっても、意味はひとつではありません。
①②③はそれぞれ違いますよね。
金属の場合は、押し込みにどれくらい耐えられるか⇒ビッカース硬度など
鉱物や宝石では「ひっかき傷にどれくらい強いか」⇒モース硬度
つまり、
へこみにくさと傷つきにくさ は、似ているようで少し違う性質なのです。
なぜ工具で削れるのか
ヤスリやドリル、リューターの先端。
これらは、加工する素材より「硬い」から削れるのです。
ダイヤモンドポイントは
名の通りダイヤモンドを研磨材に使っています。
だからこそ、ほとんどのものを削ることができる。
一方で、シリコンポイントやゴム砥石はそれよりもずいぶん柔らかく、
ヤスリを終えて、表面を整える段階で使われます。
削るとは、硬さの差を利用して不要な部分を削り落とすこと。
仕上げとは、その表面の粗さを少しずつなくしていくこと。
工具選びは、硬度差の理解そのものです。
金属は、同じ素材でも硬さが変わります
叩く、曲げる、伸ばす。
そうした加工によって内部構造が変化し、硬くなる。これが加工硬化です。
そして焼きなますと、やわらかさが戻る。
同じSV925でも、
焼きなまし直後はやわらかい
何度も曲げたり叩いた素材は硬く、バネ性が出る
金属の「素材名」だけで判断するのではなく、
いま、どの状態にあるのかを考えることも、加工上重要です。
宝石は金属より硬いのか
ジュエリーに使われる結晶質の宝石は、金属よりも硬い存在です。
モース7の水晶は、焼きなました銀よりずっと硬い。
だから石留めでは爪を石に沿って倒すことが出来ます。
しかし——
石は硬い=割れない、ではありません。
硬度が高くても、割れやすい方向(劈開)を持つ石もあります。
無理な一点圧力をかければ欠けることもあります。
硬さのほかに、靭性という別の性質もあります。
硬さは、「強さ」ではなく、素材同士の関係性です。
どちらが削れるのか。
どちらが変形するのか。
どちらが欠けるのか。
それを理解していると、
道具選び、石留めの力加減、そして制作設計の理解が深まります
硬さは、比べると見えてくる
硬さの違いは、頭で理解するよりも、比べてみるとよくわかります。
たとえば、
*焼きなましたSV925の線材と、加工硬化した線材を同じヤスリで削ってみる
*同じ番手のペーパーで、銀と真鍮を削ってみる
*同じ力で爪を倒したときの「入り方」を観察してみる
すると、工具の食い込み方、抵抗感、削り粉の出方が違うことに気づきます。
その違いを感じ取れるようになると、
「この厚みで足りるか」
「ここはもう一段焼きなました方がいいか」
「この石にこの圧は強すぎないか」
といった判断ができるようになります。
硬さは、数値で覚えるものではなく、
比較することで身体に入ってくるもの。
小さな経験の積み重ねが、制作の確かさにつながっていきます
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