まずは知ろう。「減り」ってなに?
「減り」は、業者や職人が損をしないために設定している“商業的な安全率”です。
鋳造・加工・仕上げのすべての工程で「減り」は発生します。
Q.1 溶かして流し込みむ鋳造で、「減り」が発生する理由は?
なぜ鋳造で減るのか
鋳造では、鋳物本体だけではなく、「押し金」といわれる本体につながる余分な地金が必要です。
鋳上がったあと、湯口・ランナーは切断され、製品には戻りません。
理論上は「押し金」は再溶解できますが、形が小さい・酸化・汚れが付着する・毎回完全に同重量で戻せない。という理由で、一定量はロスとして扱われます。
ですから、鋳造時に数%の「減り」が請求に含まれます。
Q.2 加工での「減り」はどんなもの?
鋳造の場合は、 鋳造肌を整えるための仕上げ減り。
鋳造直後の表面は、・鋳肌が荒い・酸化膜が付いている・微細な凹凸があります。
このため、ヤスリから徐々に整えて研磨を行うので、地金を削る必要があります。
鍛造でも、成形時や研磨工程でヤスリから徐々に整えて研磨を行うので、地金を削ります。
どちらも、工具に付着する地金や、最終の研磨時には微細な粉となって散ってしまうため、「数字に表れにくい減り」が発生します。
これらをすべて正確に計量・回収することは現実的ではないため、
あらかじめ「○%分は減る」という前提で計算するのが加工減りです。
あらかじめ「戻らない金属」を含んだ工程。
だから、減りを考えずに原価計算はできません。
全工程を通じて、およそ1割の減りを見越して考えていきます。
率に影響する要素としては
- 工場の規模(大量生産か、小ロットか)
- 回収設備の有無(集塵・精錬まで自社でできるか)
- 手作業が多いか、機械化されているか
- 地金価格の変動リスクをどこまで見込むか
- トラブル時(鋳巣・再鋳造)の保険的意味
があり、
「減りが少ない=良心的」「多い=ぼったくり」ではない
という点は、ぜひ知っておいてほしいポイントです。
鋳造や仕上げ、研磨の工程では、規模の大小に関わらず必ず地金は減ります。
これは工場でも、個人制作でも同じです。
これらは、制作工程に含まれる必然的な消耗ですので
業者や職人が数%〜1割の加工減りを設定しているのと同様に、個人作家もまた、自分の制作環境・技法・回収率に合わせて
現実的な減りを見込んだ価格設定をする必要があります。
作家が加工減りを考えないと起きること
加工減りを考慮せずに価格を決めてしまうと、
- 作るたびに手持ちの地金が目減りしていく
- 原価計算が合わなくなる
- 「忙しいのに利益が残らない」状態になる
これは技術の問題ではなく、設計の問題です。
継続して制作を続けるためには、「減ることを前提にした価格設計」が欠かせません。
作り手として大切にしたい視点
自分の仕事をきちんと理解し、
説明できることは、お客様との信頼関係にもつながります。
教室では、技術だけでなく、
制作を続けていくための考え方も大切にしています。
数字の裏側にある理由を知ること。
それもまた、ものづくりの一部なので、しっかり理解しましょう。
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