ジュエリー制作の世界がどんどん変化しています。
いま、頻繁に見かける「AI」「3DCAD」これらの言葉、魅力的に感じる人も多いのではないでしょうか。
最近はAIでジュエリーのデザイン画像をつくることも簡単になりました。
「ダイヤを浮かせる透明の雫の指輪」なんて、ちょっと詩的な言葉を入れるだけで、
それっぽいイメージが出てきます。
しかし、その画像をそのまま“指輪”に出来るかというと、まだそうはいきません。
指に通すための厚み、石を支えるための爪の構造、重さのバランス。
そういった“人が身につけるための調整”は、やっぱり人の手と感覚が必要なんです。
AIが「デザインの発想」をくれる時代。
でも「ちゃんと身につけられる形」にするのは、まだ人の仕事。
では、実際にどのような流れでジュエリーが出来るのか。順を追って説明します。
❶ AIでデザインを生成する
AIでデザインされた画像は、どのようにジュエリーになるのでしょうか。
これは、自分のイメージを自分で描くことと違い、「テキストプロンプト」(コンピューターに文章で促すこと)からAIが導き出し、そのデザイン候補の中から好みのものを拾い上げる感じ。
出力された画像を使って、実現するためのたたき台とする方法です。
これはあくまでもイメージ。
AI生成画像をそのまま使えるわけではなく、実際に現物となるためには、人の「判断」が必要です。
AIデザインは石留めが成立していないことが多いので、次のCADの際にデータで加えます。
❷ 3DCADでデータ化する
デザインしたのがAIでも人でも、CADを使うのであれば、
ジュエリーに必要な「数値」を理解し、入力する必要があります。
つまり、CADソフトを操作して「厚み」「着用感」「重さ」などを人間が判断し、調整するということです。
構造的な裏付けが大切で、それらが理解できていないと石が留められない枠になったり、使えないデータになったりします。
それが成功したデータなのか、失敗なのかは、経験がないとわからないことが多々ありますので、データを造形して実物を見る、鋳造してみる、作ってみることが必要です。
データ設計時によくある失敗例としては、厚みが足りない / 繋がっていない / 空洞が抜けない など
*CADのソフトは色々ありますね。
有名どころではRhinoceros / Fusion360 / ZBrush / Blender など
フリーソフトでもある程度使えると聞きます。
ジュエリー専門のCADもあります。3design / JCAD など
専門のCADは、ジュエリー制作のデータがあらかじめ入っているため便利です。
❸ CADデータを3Dプリントで造形する
造形が出来なければ、進みません。
CADデータを3Dプリントで造形したあとは、→ 鋳造(ロ ストワックスキャスティング)
ダイレクトに鋳造出来たり、ゴム型をとる必要があったり様々ですが、
金、プラチナ、銀に鋳造することが出来ます。
鋳造するならは、収縮や「引け」もデータの時点で考慮する必要があります。
❹ 鋳造する場合の工程 ※専門業者に依頼することが多い
3Dデータをワックスまたは樹脂で出力し(光造形・WAX切削など)、業者に依頼します。
出力から請け負ってくれるところも多いです。
鋳造は、
石膏埋没 → 焼成(中身を溶かして空洞にする)
溶けた金属を流し込む
石膏を壊して取り出す → 洗浄
業者さんの機械によって、使える樹脂も違ってくるので、要相談です。
❺ 鋳造後の仕上げ ※業者・職人に依頼、もしくは自分で手作業
湯口カット バリ取り
3Dプリントの積層痕 / 金属表面の荒れを整える
ヤスリ・ペーパー研磨
石留め・仕上げ・メッキなど
これは教室でも行っている一連の作業です。
丁寧に仕上げて、自分好みの作品に仕上げます。
❻ AI時代の「作り手の立ち位置」
ここまで読んで頂くと、「AI→CAD→鋳造」で、最後はやっぱり手仕事が必要だということが解っていただけるかと思います。
“どの形にすれば気持ちよく身につけられるか”は人間にしか判断できないので、
“身につけられるジュエリー”に仕上げるのは、まだまだ人間の仕事です。
どの方法をつかっても、時間とお金はかかります。
効率やコストの都合もあるので、自分は「どんな便利さが欲しいのか」が、
導入する基準・判断となります。
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