前回は、理科のお話をしました。
いま、実際に制作をしている皆さんはお気づきでしょうが、ジュエリーを作るとき、必要なのは「手先の器用さ」だけではありませんよね。
「これって、どんな意味の言葉だっけ?」
「この長さで大丈夫かな?」
「どうしてこの金属はこうなるんだろう?」
「昔のジュエリーは、どうやって作られていたんだろう?」
「この形、どうしたらきれいに見えるかな?」
私たちは、制作をしながら、実はいろいろなことを考えています。
そこで今回は、ジュエリー制作を、ちょっと強引に(笑)
「国語・算数・理科・社会・美術」に分けてみました――。
① 国語 ―「言葉」を知る
ジュエリー制作では、意外と「言葉」が重要です。
素材の名前、工具の名前、技法の名前。
「ロウ付け」と「溶接」は違う。
「硬い」と「丈夫」も同じではない。
「純銀」と「銀合金」も違う。
言葉の意味を正しく知ることで、制作中の判断が変わってきます。
さらに、作品を販売するなら、
商品説明を書く
素材を表示する
お客様に説明する
オーダー内容を確認する
など、「伝えるための言葉」も必要になります。
ジュエリー作りには、手だけでなく「言葉」も大切なのですね。
② 算数 ―「数字」を使う
これは、かなり分かりやすいですね。
ジュエリー制作には、数字がいっぱい出てきます。
長さ・幅・厚み
重さ
比重
サイズ
地金の必要量
ロウ材の種類
原価
販売価格
利益
たとえば、
「この板をあと0.2mm薄くしたらどうなる?」
「このリングは何gくらいになる?」
「地金代はいくら?」
という場面では、算数が必要です。そして作家として活動するなら、
売上・経費・在庫・利益
という、さらに現実的な「算数」も登場します。
③ 理科 ―「なぜ?」を知る
ここは、前回の記事につながります。
金属は、なぜ酸化するのか。
なぜロウ付けができるのか。
なぜ液体によって、金属がさまざまに変化するのか。
なぜ焼きなましをすると、金属が柔らかくなるのか。
なぜ宝石によって硬さが違うのか。
こういう「なぜ?」の部分には、物理や化学、地学などの理科が関わっています。
「やり方」を覚えるだけなら、手順を覚えればできます。
でも、「なぜそうなるのか」
が分かると、初めて出会った素材や、制作中の失敗にも対応できるようになります。
④ 社会 ―「人・歴史・法律」を知る
ジュエリーは、人の文化の中にあるものなので、社会科ともかなり深い関係があります。
たとえば、
貴金属の歴史
宝石の産地
世界のジュエリー文化
鉱山と資源
貿易
環境問題
エシカルジュエリー
著作権・意匠権・商標権
古物営業法
PL法
など。
誰が、どんな目的で、どんな時代に、どんなジュエリーを作ってきたのか。
歴史を知ると、今、自分が作っているものが、ずっと長い「ものづくりの歴史」の中にあることが見えてきます。
そして、現在のジュエリーを取り巻く法律や環境問題を知ることも、作り手として大切な勉強です。
⑤ 美術 ―「感じる・考える・表現する」
そして、やっぱり最後は美術。
形、色、線、質感、バランス、余白、光と影。
「なんとなくきれい」から一歩進んで、
なぜ、きれいに見えるのか。
なぜ、この形に惹かれるのか。
を考えていくと、デザインや美術の世界につながっていきます。
絵画や彫刻、建築、工芸などを見ることも、ジュエリーのデザインを考えるヒントになります。
そして、全部がつながっている
実際の制作では、「指輪を作る」という一つのことだけでも、
デザインを考える→ 美術
サイズを測る→ 算数
金属の性質を考える→ 理科
材料費を計算する→ 算数
技法の名前や意味を理解する→ 国語
貴金属について表示・販売する→ 国語+社会
……というように、全部がつながっています。
だから、
ジュエリー制作は、小さな総合学習であり、生涯学習です。
大人になってから、勉強が「知識」ではなく「道具」になって戻ってくる。
昔に習って忘れていることを、今、また学びながら使う。
そして、使っているうちに、知識が少しずつ深まっていく。
学校で習ったことが、ジュエリー制作を通して、もう一度つながったり
今感じていることが、作品として深みを出してくれたり。
経験のひとつひとつが無駄ではない。ジュエリー制作って、そんな面白さがありますね。
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