金属アレルギーとジュエリー制作(月曜定期便48)

ジュエリー販売・制作の現場では、「金属アレルギー」に関する質問を受けることがよくあります。
アレルギーを持つお客様にとっては、身につけるものを選ぶ際の重要なポイントなので、基本的な知識を持っておく必要があります。

今回は、シルバー・ゴールド・プラチナ・真鍮 を中心に扱う制作者の方向けに、金属アレルギーをわかりやすく整理してみました。

  1. 金属アレルギーとは?

金属アレルギーは、金属が汗や皮脂で溶けてイオンとなり、皮膚の中で“異物”として反応することで起こります。かゆみ・赤み・水疱・ヒリヒリといった症状が出るため、アクセサリーとは切っても切れないテーマです。

特に下記は、反応が強く出やすい傾向があります。

*長時間触れ続ける部分(耳・首・指)
*汗をかきやすい季節
*摩擦が起きる金具部分

  1. 貴金属ごとのアレルギーの起こりやすさ

● シルバー(SV925)
純銀は、赤ちゃんの食器に使われるほどアレルギーの少ない金属です。
稀にSV925の7.5%含まれる 銅 に反応する場合があります。
また、シルバー特有の黒ずみ(硫化)が刺激になることもあります。
ニッケルは含まれないため、ニッケルアレルギーの方にとっては比較的安心な素材です。

● ゴールド(K10 / K14 / K18)
ゴールドそのものは安定した金属です。
アレルギーを左右するのは 割金(混ざっている他の金属)です。

*イエロー/ピンク系:銀・銅が中心で比較的トラブルは少なめ。
*ホワイトゴールド:
 → ニッケルを割金に使うタイプの場合、アレルギーが起きやすい。
 → 現代は“パラジウム系”が主流になってきているため、古いニッケルを使ったジュエリーには注意。

● プラチナ(Pt900 / Pt850)
プラチナはアレルギーが非常に少ない金属です。
ただし、少量の 割金に、ごく稀に反応が出る場合もあります。

結婚指輪など常時身につける指輪で皮膚との密着度が高く、汗がこもることでかゆみが出ることがあり、これをアレルギーと誤解されることもあります。

● 真鍮(Brass)(※貴金属ではありません)
真鍮は 銅+亜鉛 の合金で、どちらも汗でイオン化しやすく、アレルギーを起こしやすい素材です。
とくに、ピアスポストやリングなど“肌に密着する部位”に使用するとトラブルが出やすい傾向がありますので、工夫が必要な場合もあります。
密着しない トップ・チャーム・ブローチ などに使うと安心です。

  1. 制作者として気をつけたい5つのポイント

① 割金を理解する
同じ「K18」でも、残り25%の金属はメーカーによって違います。
特にホワイトゴールドは ニッケルフリーかどうか を必ず確認しましょう。
(ちなみに、教室から出す鋳造のホワイトゴールドはニッケルフリーです)
素材の安全性を説明できると、ユーザーの信頼度がぐっと高まります。

② 金具は“接触時間の長い部位”を優先して選ぶ
耳は特に敏感で、アレルギーが起きやすい場所です。
アレルギーがあるお客様からの依頼で金具を選ぶ際は、お客様のご意向にそえる提案ができるように準備をしましょう。

ピアスならばポストだけアレルゲンとなる素材を避けるなど、素材を使い分けることでトラブルを減らせます。

③ 真鍮は使う“部位”を工夫する

真鍮は魅力的な素材ですが、長時間触れる部分には不向きです。
肌に接触しないトップ部分や装飾として使うことで、デザインの幅を保ちながらリスクを減らせます。

④ コーティングの注意点

メッキや樹脂コーティングは一時的にアレルギーを抑える効果がありますが、

*摩擦で剥がれる
*紫外線で樹脂が劣化する
という“寿命”があります。

「使っているうちにメッキは減ります」「再コーティングが可能です」と案内しておくと親切です。

⑤ 作品の仕立てでできる工夫

アレルギーの原因は金属だけでなく、 “摩擦や角の刺激” がきっかけになることもあります。

*裏側の角をしっかり落とす
*服や皮膚に引っかかる形状を避ける
*汗が溜まりやすい構造にしない

といった細部の配慮が、安心して使える作品作りにつながります。

  1. お客様に伝えておくと安心なこと

制作者として、購入者に伝えておくと喜ばれるポイントです。

*汗や石鹸がついたら軽く拭く
*黒ずみ(シルバーの硫化)は早めに落とすほうが刺激が減る
*真鍮は肌が弱い方にはおすすめしにくい
*違和感を感じたら無理をしない
*ホワイトゴールドは種類によって差がある
*素材表示は必ず確認してもらう

「素材を理解して大切に使う」という意識を共有できると、作品の満足度もぐっと上がります。

※アレルギー反応がでるかどうかはパッチテストでもわかる

 正確なことは、医療関係でアレルギー検査を受ける方が良いのですが、
簡易的にパッチテストで反応を見ることも出来ます。
 皮膚の柔らかい部位に、金属をテープなどで貼り付け、様子を見ます。
 赤みが出たり、かゆみがあれば、その素材に反応していることになります。

  1. 金属アレルギーは、“素材の選び方” “仕立ての工夫” “情報の伝え方”の3つで大きく防ぐことができます。

貴金属を扱う制作者にとって、割金の知識や素材の特性を理解することは、
作品の安全性と信頼性を支える大切なポイントです。
ユーザーとの距離が近くなる時代だからこそ、誠実な素材選びと説明が求められています。

安心して使えるジュエリーを、丁寧に届けていきましょう。

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