鋳造の可能性その2/お気に入りを「かたち」に(月曜定期便25)

ロストワックスキャスティングは、ワックス原型を金属に置き換える技法です。
前回のダイレクトキャスティングに引き続き、鋳造の可能性をテーマに、「既にある造形物(コイン・模型など)」をワックスに写し取り、オリジナルの鋳造作品を作る方法と注意点についてご紹介します。

──コイン・彫刻などを鋳造してジュエリーにする方法
旅先で手に入れたコインや、お気に入りの模型。
小さな彫刻のように魅力的なこれらの造形物を、金属に置き換えてジュエリーにできたら素敵ですね。

すでにある形を金属にする──ワックス原型の取り方
元の造形物が燃える素材でない場合(石・金属・プラスチックなど)は、そのまま埋没して鋳造することはできません。
そのため、「一度シリコンゴムなどで型を取り、そこにワックスを流して原型をつくる」工程が必要です。

よく使われる方法:
①シリコンで片面または両面型を作成
②ワックスを注入して複製原型を作る
③ワックス原型の表面を調整してから、通常のロストワックス鋳造に進みます。

実例 A:アンティークコインやビンテージ模型をジュエリーパーツに
古い外国のコインや、模型のようなアイテムは、ディテールが細かく、ジュエリーに仕立てると映えます。
ただし、文化財保護法や貨幣法に抵触する場合があるため、現行貨幣や複製禁止のものは避けましょう。

ポイント:
複製には低粘度の精密用シリコンを使用
表面の摩耗もそのまま写るため、「味」として活かすか、補修するか判断が必要

大きなものはゴム型費用もかかります。
最近は身近なお店にもモールド(型取り用のゴム)が売っていたりしますので、身近な素材で部分的に形を写すことも、工夫して試すのも面白いです。

実例 B:自然物を金属に置き換える
木の実や、形の面白い鉱物などは、それ自体が魅力的です。
直接鋳造はできませんが、シリコン型でワックス原型を作れば、鋳造に出せます。

応用アイデア:
ペンダントやリングの台座にそのまま使う
表面の質感をそのまま活かすことで、彫金では出せないナチュラルな印象に

鋳造する際の重要ポイント①:金属の重さに注意
素材が金属になることで、比重(重さ)が大きく変わります。

素材 ・比重・ 同サイズでの重さ感
ワックス- 約1 -とても軽い
SV925- 約10.4 -約10倍
K18 -約15.5 -さらに重い
Pt900- 約21.5 -非常に重い

例えば2cm角の石をそのままK18で鋳造すると、15gを超えることもあります。
これはイヤリングやペンダントとしては重過ぎるため、身に着ける用途にはサイズ調整や肉厚の見直しが必要です。

軽量化の工夫:
裏面をくり抜く・空洞を設ける
小さく分割してシリーズ作品にする

鋳造する際の重要ポイント②:引け・巣を防ぐために
厚みのある物体は、金属が冷却される過程で生じる「引け」や「巣(す)」にも注意が必要です。

引け:厚い部分が冷却収縮でくぼんでしまう現象
巣:金属の中に残った気泡

とくに中央に厚みのある形状(石のような丸み)は、鋳造時にトラブルが起きやすいです。

対策:
ワックス段階で厚みを均等化しておく
ワックス内に気泡を残さない

まとめ
作品作りには、創意工夫が大切です。
受講生さんの中には、これらの方法を応用した作品を作られた方もいらっしゃいます。

そして鋳造は、物理的なトラブルもつきものです。
厚すぎる、重すぎる、思った通りにできないこともありますが、それを乗り越えて完成品に仕上げるところがこの方法の「工夫」たるところ。
ただ、「型を取る」だけではなく、どう使うかが大切です。


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