自然のかたちをそのまま利用(鋳造)する
── ダイレクトキャスティングの魅力と、知っておきたい注意点について紹介します。
ロストワックスキャスティングでは、原型を“失う”ことによって、美しい金属のかたちを得るという工程をたどります。
その中でも、自然物をそのまま鋳造する「ダイレクトキャスティング」は、
とても感覚的で、一期一会の魅力に満ちています。
たとえば、小さな葉っぱや木の実、貝殻、小枝……
その一つひとつが、もう二度と同じものは手に入らない、自然の“かたちの記憶”です。
けれどこの技法には、ぜひ押さえておきたいポイントがあります。
それが、「完全に燃えるかどうか」と「空気の逃げ道の確保」です。
■ 「完全灰化」のススメ
自然物はワックス原型と違い、燃やすと灰が多く残ったり、炭になるという特徴があります。
そのため、焼成時に燃え残った部分が鋳型内に留まってしまうと、
金属が流れきれず、鋳造不良(欠けや湯流れ不足)が起こりやすくなります。
とくに水分が多い素材は注意が必要。
事前にしっかり乾燥させることはもちろん、必要に応じて
パラフィンや薄いワックスでコーティングしておくと、灰化しやすくなります。
私の経験では、乾燥した植物などはきれいに焼ける素材でした^^
逆に、厚みがありすぎる木の実や、まだ青い枝などは、炭になりやすくダイレクトキャストには向きませんので、別の方法を次回説明します。
■ 「空気抜き」の設計
もうひとつ大切なのは、素材の内部に空気を閉じ込めないことです。
木の実や虫の殻のように、内部に空洞がある素材では、焼成時や鋳造時にガスが発生することがあります。
・空気がうまく抜けないと、内部に金属が流れ込まず欠けが生じる
・鋳造中に破裂して鋳型が壊れる
・外見がきれいでも中がスカスカになる(空洞化)
などのトラブルにつながります。
これを防ぐために、
・ガス抜きの細い道(ベント)を作る
・中を樹脂などで埋めて空気を排除しておく
といった準備が有効です。
■ 一回限りの原型
自然物を使ったダイレクトキャスティングはワックスと同様、原型そのものが一回限りのものになります。
だからこそ、「燃えること」と「抜けること」──
この2つをしっかり意識することで、金属として留めることができます。
自然のかたちをそのまま残したジュエリーには、どこか言葉にならない力があります。
人の手では表現できない自然の美を利用した作品。
一度は挑戦したいと思うことでしょう。
■鋳造に出す際のリスク
ダイレクトキャスティングには、リスクが伴います。
先に説明した条件が満たされていなければ、失敗するからです。
鋳造業者さんは、その失敗に対してに補償しませんので、失敗していても工賃と金属の費用は発生します。
また、厚みがある素材であればそれだけ重量が付きますので、費用もかかります。
自然素材は魅力的な反面、費用も結構かかるということを理解しておく必要があります。
■やってみたいと思ったら
まずは素材選びから。
そして、ワックスの授業の際にお持ちください。
使えるか、使えないか。あるいはどういう使い道があるか。
教室で具体的なデザインも一緒に考えましょう。^^
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