私たちが教室で使っている貴金属(金、銀、プラチナ)の他にも、アクセサリーに使われる金属には多くの種類があります。お店に並ぶ、色々なジュエリー、アクセサリー。
高級なものや、お手軽プチプラなもの。
エンドユーザーは、自分の好みのものを自分の予算の範囲で選んで身につけることができます。
そして作る側は商品企画をする際に、どんな素材でどのように作るのか、またターゲットを考えて商品を世に送り出しています。
今日は、金属の種類のお話です。クラフトルームHAKATAはジュエリー教室なので、「つくる」ことを前提にそれぞれの特徴をまとめてみました。
貴金属以外の代表的な金属とその利点・欠点
◆ステンレス鋼 (Stainless Steel)
耐久性が高く、錆びにくい。アレルギーを引き起こしにくい(ニッケルフリー製品も多い)。磨き上げると高級感がある。 加工が難しく、複雑なデザインには向かない。専門的な道具が必要。
◆チタン (Titanium)
非常に軽量で強度が高い。アレルギーを起こしにくい。耐腐食性に優れ、汗に強い。 非常に硬いので、切断や加工には特別な工具が必要。加工が難しく、高価になることがある。
◆真鍮 (Brass)
ゴールドに似た見た目で、価格が安い。比較的加工が容易。 時間が経つと表面が変色(磨きで再生可能)。体質により金属アレルギーを引き起こすことがある。
◆銅 (Copper)
独特の赤みを帯びた色が特徴的。加工がしやすく、アートアクセサリーによく使われる。 変色しやすく、緑青(緑色の錆)が出ることがある。柔らかいため、傷がつきやすい。
◆アルミニウム (Aluminum)
非常に軽量で、扱いやすい。錆びにくい。 高級感が劣る。強度が低いため、変形しやすい。
◆亜鉛合金 (Zinc Alloy)
コストが非常に低い。製造が容易で、多くのデザインに対応可能。安価なアクセサリーに使われることが多い。 強度が低いため、日常使いには不向き。長期間使うと変色しやすい。アレルギーの原因となる場合がある。
◆コバルトクロム (Cobalt Chrome)
強度と耐久性が非常に高い。光沢が美しく、傷がつきにくい。 加工が難しく、コストが高め。
◆ニッケル (Nickel)
硬度が高く、安価。他の金属との合金に使われることが多い。 アレルギーを引き起こしやすい。長時間着用には不向き。
ハンドクラフトに向いている金属は、加工のしやすさや扱いやすさ、そして入手しやすさ。
そして用途によって耐久性も考えます。
ガスバーナーで焼きなましができる /焼きなましに適さない金属
金属を加工する際には、硬くなった金属を焼なます必要が生じます。
ガスバーナーを使った焼きなましに適しているのは、銅、真鍮、銀、金です。
◆銀 (Silver)
銀は焼きなましに適した金属で、柔らかくしやすい 赤熱するまで加熱し、自然冷却または水で急冷します。
◆金 (Gold)
純金や18金は、焼きなましによって柔らかく加工しやすくなります。 加熱後、自然冷却または水で急冷します。
◆真鍮 (Brass)
真鍮も焼きなまし可能で、柔らかくして加工性を向上できます。 銅と同様に赤熱するまで加熱し、自然冷却または急冷します。
注意: 酸化して黒ずむため、磨く手間がかかる。加熱しすぎると亜鉛成分が蒸発し、金属の特性が変化するため、過熱に注意が必要です。
◆銅 (Copper)
銅は、ガスバーナーで簡単に柔らかくできます。 赤熱するまで加熱し、その後自然冷却または水で急冷します。
◆アルミニウム (Aluminum)
焼きなましが可能、温度調節が非常に重要。軽量で扱いやすく、初心者にも適している。手で曲げられる程度の柔軟性がある。 アルミニウムは低い温度で柔らかくなるため、赤熱する手前(300~400℃)で加熱します。注意: 過熱すると溶けやすいので慎重に。
◆ステンレス鋼 (Stainless Steel)
錆びにくく、耐久性を高い。光沢があるため、仕上がりが美しい。強度が高いので、細かいパーツやリングなどを作るのに適している。 ステンレス鋼は焼きなましが難しい金属。ガスバーナーでは不十分。専用の炉や高度な温度管理が必要。
◆亜鉛合金 (Zinc Alloy)
非常に安価。
溶解して型に流し込む作業など、キャスティングに適している。 亜鉛合金は低温で溶けやすい
◆チタン (Titanium)
耐久性があり、軽量で加工後も使いやすい。
ワイヤーや薄いプレートとして使用するときに適している。 チタンは焼きなましに高温が必要で、酸化層ができやすいため、ガスバーナーでの焼きなましは難しい。
金属を溶接やロウ付けする方法は、金属の種類や用途に応じて選ぶ必要があります。
今回挙げた焼きなましが出来る金属(銀、金、真鍮、銅、アルミニウム)のロウ付け方法とそれぞれの手短なポイントは次の表です。プラチナは酸素バーナーを使用するため表から外します。
ロウ付け方法 | ポイント | |
銀 (Silver) | 銀ロウ付けが最も広く使われます。 銀の含有量が高いロウ材を選び、接合部分にフラックスを塗布。 ガスバーナーで加熱し、ロウが溶けて流れ込むようにします。 | 銀は熱伝導率が非常に高いので、全体を均一に加熱する必要があります。ロウ付け後、酸洗いで表面の酸化膜を取り除きます。 |
金 (Gold) | 金の種類に応じた金ロウ材を使用。18金や14金など、使用する金の純度に合わせたロウ材を選びます。フラックスを塗布し、ガスバーナーで加熱して接合。 | ピンポイントで、フラックスを少量使用するだけで十分。加熱時間が長すぎると金の色味が変わるため、注意が必要。 |
真鍮 (Brass) | 銀ロウ付けが最適。ガスバーナーで加熱する際、フラックスを塗布して酸化を防止します。真鍮ロウも市販されています。 | 真鍮も熱伝導率が高いため、全体を均一に加熱します。過剰な加熱を避けるため、ロウ付けの際には慎重な温度調節が必要です。 |
銅 (Copper) | 銀ロウ付けや銅ロウ付けが一般的。ガスバーナーを使い、銀ロウや銅ロウを加熱して接合部分に流し込みます。フラックスを使用して酸化を防ぎ、ロウが金属表面にしっかり密着するようにします。 | 銅は熱伝導率が非常に高いです。加熱を広範囲に行う必要があります。ガスバーナーの出力が十分でない場合、接合が難しくなることがあります。 |
アルミニウム (Aluminum) | アルミニウム用ロウ付けを行います。専用の低温アルミニウムロウ材とフラックスを使用。ガスバーナーで300~400℃に加熱し、ロウ材を溶かして接合します。 | アルミニウムは酸化しやすいです。加熱しすぎると溶けやすいので、慎重な温度調節が必要です。 |
ロウ付けに必要な道具
ガスバーナー: ロウ付けの火力がちょうど良い。
フラックス: 酸化を防ぎ、ロウ材が金属に密着しやすくします。
ロウ材: 接合する金属に適したものを選びます(例: 銀ロウ、銅ロウ、金ロウ)。
耐火台: 金属を加熱するための作業台。
希硫酸液: 加熱後の酸化膜を取り除くための洗浄液。
●銅、真鍮、銀、金は、ガスバーナーを使ったロウ付けがおすすめです。
●アルミニウムは特殊なフラックスやロウ材を使う必要があるため、少し難易度が上がります。(当教室では行っていません)
溶接にはTIG溶接やレーザー溶接が使用されますが、当教室には溶接機はありません。
入手しやすいハンドクラフト用の金属は、ホームセンターやオンラインショップ、クラフト専門店で手軽に購入できます。
初心者におすすめの金属
真鍮: 見た目も好まれ、価格が手頃。比較的加工しやすい。
銅: 初心者が叩きや曲げの練習をするのに最適。
アルミニウム: 軽量で柔らかいので、ワイヤー加工に便利。制作前のイメージ確認にも有効。
教室で加工が出来るのは、貴金属(金、銀、プラチナ)と真鍮、銅。
この中でプラチナは酸素バーナーを使用するため、慣れていない方にはワックス制作から鋳造を経て、磨き上げる方法がお勧めです。
焼きなましやロウ付けが出来ない(あるいは難しい)金属は、当教室では専門工具がないため対応できません。
素材を研究することで、色々なものが作れます。
ただ、その素材に適した作り方があるので、ハンドクラフトには向かない素材もあり、修理ができない素材もあります。
貴金属が高価になった今、さまざまな「素材」にも興味を持って、試してみると楽しいでしょうね。
ただし、金属の加工は火や熱、薬品も扱いますので、危険を伴う作業には十分な知識と注意が必要です。
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