金属の磨きについて(月曜定期便2)

◆金属を磨き上げるまでの手順◆

作品作りにおいて、見た目に関わる大事な要素の一つに「研磨」があります。
皆さんがお店で見る商品は、ピカピカの状態に仕上げてありますので、自分が作った作品の研磨状態が気になる方も多いのではないでしょうか。

金属は、研磨すると鏡のように周囲を映します。
その美しさは成形から研磨の順番にとても影響されています。

間違われることが多いのですが、金属ヤスリで削るのは、「磨き」ではなく「成形」です。
金属ヤスリで形を整えています。ヤスリ目があるにしろ、この段階で平面は平ら、曲面は綺麗なカーブにしておくことが大切です。
金属面の凸凹はそのまま研磨に影響がでます。面やカーブが整ったら、金属ヤスリは中目⇒油目⇒(精密や粗い紙ヤスリ)まで、順番に省略しないで傷取りをしましょう。
例えば中目ヤスリで取り残した傷を、それより細かい油目取ろうとすると時間もかかります。
傷取りを終えてからが「研磨」の段階になります。

◆金属研磨の基本手順◆

  1. 表面の準備 
    成形を終わらせ、一旦金属粉や汚れを落とします。
    粗削り: 表面に大きな傷や凹凸がある場合、ヤスリやサンドペーパー(粗い番手)を使って滑らかにします。鋳造巣(鋳造の時に生じる穴)があれば、研磨前に取るか埋めるかしておきましょう。
    洗浄: 金属表面の油脂や汚れを取り除きます。超音波洗浄機を使って、中性洗剤や専用の洗浄液を使用します。(すり板に残っている金属の破片粉も傷の元になりますので、粉もブラシで掃きましょう。
  2. 段階的な研磨
    研磨は番手(粒子の粗さ)を徐々に細かくすることで進めます。

  粗研磨: 粗目のサンドペーパーや砥石を使用し、大きな傷や凸凹を削り落とします。
  中研磨: 表面をさらに滑らかにするために、粒度の細かい研磨材を使用します。
  仕上げ研磨: 非常に細かい粒度のペーパーや布バフを使って光沢を出します。

  例:紙ヤスリ#240~400~600〜800~1000~1200以上を順に使う あるいは
    セラミック・シリコン等のリューターポイントを粗いものから順に使う
    (混合する場合もあります)

 3.バフ掛け、最終仕上げ
  バフホイールの使用: 研磨剤(コンパウンド)を塗布した布バフやフェルトバフを使用します。
  回転速度: 適切な回転速度を保ち、摩擦による過熱に注意。研磨材は用途に応じて使用。

 4.洗浄: 研磨剤を洗浄機で落とし、表面に曇りや残留物がないことを確認します。

 5.保護
  必要であればコーティング: 研磨後に酸化防止剤の塗布やめっきをすることで変色を防ぎます。

◆注意点◆
  安全のため研磨中はゴーグルや防塵マスクを着用し、手袋で手を保護することをお勧めします。
  バフ掛け中に金属が回転に弾かれ飛ばされることがあるため、しっかりと固定します。
 

◆貴金属の研磨に使用する研磨材の成分◆
  代表的な研磨材の種類と成分

  1. 酸化アルミニウム(アルミナ / Aluminum Oxide)
    用途: 一般的な金属、特に硬めの貴金属(プラチナ、ホワイトゴールド)に使用。
    特徴:粒度が均一で、研削力が高い。表面を比較的速く滑らかにできます。
    研磨剤例:青棒(粗研磨用)白棒(中研磨用)
  2. 酸化鉄(ルージュ / Iron Oxide)
    用途: 金や銀などの柔らかい貴金属の最終仕上げに最適。
    特徴:非常に細かい粒子で高い光沢を出す。赤っぽい色が特徴的
    研磨剤例:赤棒 ⇒教室の「赤棒」はこちら
  3. 酸化クロム(Chromium Oxide)
    用途: 銀やプラチナなどの貴金属の仕上げ研磨に使用。
    特徴:緑色の研磨材として知られ、高い光沢と細かい仕上げが可能。
    研磨剤例:緑棒 ⇒教室の「青棒」はこちら
  4. ダイヤモンドペースト
    用途: プラチナや硬度の高い金属の超精密仕上げに使用。
    成分:人工ダイヤモンド粉末を含む。非常に細かい粒度(μm単位)で、超鏡面仕上げが可能。
    特徴:研磨力が高いが高価。精密加工品やジュエリーの高級仕上げに適している。
  5. ケイ酸塩系(Silica-based)
    用途: 金属全般の仕上げ研磨。
    特徴:液体研磨剤(ポリッシュクリームやペースト)の成分として含まれることが多い。
    ソフトな研磨が可能で、金や銀などの柔らかい貴金属にも使用される。

 貴金属(ゴールド、シルバー)には柔らかいバフを使用し、傷が付きにくいように注意。
 異なる成分の研磨材を混ぜて使うと、望む仕上がりが得られにくくなることがあります。
 各工程で使用するバフや布を分けると効率的です。
 研磨剤の適量使用:過剰な使用は金属表面に余分な傷を生じさせる可能性があります。

 研磨材の選択基準一覧

酸化鉄、酸化クロムが最適。柔らかい素材に優しい。
酸化クロム、酸化鉄を使用し、高い光沢を実現。
プラチナ酸化アルミニウム、ダイヤモンドペーストなど、高硬度の研磨材が必要。
ホワイトゴールド酸化アルミニウム、またはダイヤモンドペースト。
注意点:混合使用は避ける

※教室で使用しているものは、緑の青棒、赤い赤棒、オレンジはノンクロムで青棒と同様のもの、
ペースト用研磨材を使用しています。プラチナ専用Pピカは保管品(貸出)あり。
ダイヤモンドペースト(#4000、#14000)は販売品があります。

磨きヘラ(バニッシャー)について◆
講師がよく、ヘラがけしましょうと言いますが、磨きヘラ(バニッシャー)とは、金属の表面を滑らかにし、光沢を出すために使う道具です。
細いペンのような形をしていて、先端が硬い金属でできています。表面に圧力をかけてこすることで、小さな傷や凹凸をならし、光を反射するきれいな仕上がりにします。
バフかけ前にヘラ磨きをすると、効率よく研磨出来ますが、苦手な方も多いようですので、力加減など色々試してみましょう。
金属に圧力をかけると、加工硬化を起こして表面が硬くなりますので、焼なましてしまったピアスのポストなどは、ヘラがけして硬くします。

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