ジュエリーをつくる、貴金属加工とは?
貴金属加工とは、金(ゴールド)、銀(シルバー)、プラチナなどの「貴金属」を使ってジュエリーやアクセサリーを作る技術のことです。これにはデザインを形にする作業や、仕上げをして美しくするプロセスが含まれます。
貴金属は熱や圧力に強く、加工しやすい性質を持っています。
熟練した職人は手作業で一つひとつ丁寧に仕上げていきますが、最近では様々な製法も機械も増えていて、自由度が高まっています。
しかしながら、「つくり」の基本は手作業であり、すべてを機械任せにはできません。
便利な機械は高額で、それも一部の工程に必要なだけ。
では、どの部分を手作業で行い、どの部分を機械に任せるか。それを吟味しながら制作を進めていくことになります。
私たちがジュエリー制作をするためには様々な手作業の技法を知り、そして実際に手を動かして習得します。それから利用できる方法を複数知ることで作り方が変化します。
同じデザインでも作り方を変えることができるので、ジュエリー制作は臨機応変さが必要です。
主な加工の手順
1.デザイン決定 | 最初にどんな形にするかを決めます。手描きやコンピューターで3Dデザインを作ったりします。 |
2.製法の選択 | そのデザインをどのような技法で制作するかを吟味します。 |
◇鍛造(たんぞう/フォージング) 金属を叩いたり伸ばしたりすることで形を整える伝統的な加工技術のことです。 熱を加えた金属をハンマーや専用の工具で打ち延ばして成形していきます。 ◇鋳造(ちゅうぞう/キャスティング) 金属を溶かして型に流し込み、デザイン通りの形を作ります。 これを「キャスト」とも呼びます。 ◇切削(せっさく)と整形 金属の形をヤスリや工具で削って、細かい部分を整えます。 ◇装飾や石留め デザインによっては宝石をはめ込んだり、模様を彫ったりします。 ◇仕上げ(研磨) 表面を磨いて光沢を出します。 | |
※石留めと仕上げは、デザインにより順序が変わります。 |
鍛造(たんぞう/フォージング)
鍛造とは、金属を叩いたり伸ばしたりすることで形を整える伝統的な加工技術のことです。
熱を加えた金属をハンマーや専用の工具で打ち延ばして成形していきます。
この方法は、昔から刀や武器、工具の製作に使われてきた技術をジュエリー製作に応用したものです。
職人の手作業が多いため、一点物や高品質のジュエリーに向いています。
<鍛造の加工手順>
1.金属を熱する
金属を柔らかくするため、適切な温度(約800~1000℃)まで加熱します。
2.ハンマーで叩く
加熱した金属をハンマーや金床(かなとこ)で叩き、形を少しずつ整えていきます。
冷却と再加熱を繰り返す
叩いて形を整える間に、金属が硬くなっていくので、再び加熱して柔らかくします。
この「焼きなまし」という工程を繰り返すことで、効率よく形を作れます。
3.細かい調整と仕上げ
最後に、削ったり磨いたりして、表面を滑らかにし、デザインを仕上げます。
<鍛造の特徴や魅力>
◇丈夫さ: 金属を叩いて圧縮することで、非常に密度が高くなり、丈夫な仕上がりになります。
◇手仕事の温かみ: 鍛造はすべて手作業で行われるため、一点一点に職人の個性と技術が反映されます。
◇高級感: 結婚指輪や婚約指輪にもよく使われます。
◇伝統と現代の融合: 古くからの技術に、最新の道具や技法が組み合わされることもあります。
鍛造は、ひとつひとつの作品が時間と手間をかけて丁寧に作られるため、「一生モノ」のアイテムとして特別感があります。
鋳造(ちゅうぞう)
鋳造とは、溶かした金属を型に流し込み、冷やして固めることで形を作る加工方法です。
細かいデザインや造形的な形状が作れるため、幅広いジュエリー製作に使われます。
一度型を作れば量産が可能で、コスト効率も良いです。
初心者から熟練の職人まで使われています。
カスタムデザインジュエリー、大量生産の装飾品に向いています。
<鋳造の加工手順>
1.デザインの作成
作りたいジュエリーのデザインを決めます。
2.原型を作ります。原型はワックス(ろう)や金属などで作られることが多いです。※
3.鋳型の作成
原型を石膏などで覆って型を作ります。この型が固まると、原型を取り除いて金属を流し込むための空洞ができます。(=原型のワックスが失われるので、ロストワックスキャスティングと呼ばれます)
4.金属を溶かす
金や銀、プラチナなどの貴金属を高温(約1000℃以上)で溶かします。溶けた金属は液体のようになります。
5.型に金属を流し込む
溶けた金属を型の空洞に流し込みます。このとき、遠心力や真空を使って金属を隅々まで行き渡らせます。(専門の鋳造機を使いますので、なければ鋳造業者に依頼することになります)
6.冷却と型崩し
型の中で金属を冷やして固めた後、石膏を割って中の鋳物を取り出します。
7.仕上げ
型から取り出したばかりの金属は表面が粗いので、ヤスリや研磨機を使って磨きます。
その後、必要に応じて装飾や宝石を加えます。
※上記の2の工程で作るワックス原型が、「ワックス」講座で行う作業になります。
鋳造の特徴や魅力
◇複雑なデザインが可能
鋳造は、細かい模様や造形的な形状を正確に再現するのが得意です。
植物や動物などのモチーフジュエリーにも適しています。
◇大量生産が可能
一度ゴム型を作ればワックスが複製できるので、効率的な生産ができます。
◇コストの柔軟性
鍛造に比べて工程が短縮できるので、比較的低コストでジュエリーを作ることができます。
◇芸術性が高い
デザインの自由度が高いため、アーティスティックで個性的な作品が多いです。
切削(せっさく)と整形
金属の形をヤスリや工具で削って、細かい部分を整えます。
これはどんな制作方法でも必要な作業です。
糸鋸で切る、ヤスリで削る、寸法を測りバランスを整えます。
機械を使う前に、手作業で金属の状態を把握することに慣れてから、目で見て判断できるようになりましょう。
装飾や石留め
デザインによっては宝石をはめ込んだり、模様を彫ったりします。
先を急ぐと元に戻れない状態になってしまうので、どのような状態になったら次の作業に移れるのか、経験を積んで作業を進めます。
石留めも、石の特徴に留意する必要があります。
仕上げ(研磨)
表面を磨いて光沢を出します。
先を急ぐと元に戻らねばならない状態になってしまうので、どのような状態になったら次の作業に移れるのか、経験を積んで作業を進めます。
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