今回は、紙ヤスリを特に取り上げてまとめてみました。
制作をしていると、金属の表面は光っているように見えるのに、
なぜ全体に紙ヤスリをかける必要があるのだろうと疑問に感じるときもあることでしょう。
「なぜ最初に紙ヤスリで傷をつけるの?」
貴金属の表面には、肉眼ではわからない凹凸や加工時の傷があります。
表面の凹凸は、金属を曲げ延ばしするだけで生じ、「傷」は、ひっかいたような深い傷だけではなく、針を刺したようなピンホールや、工具でつけた凹みも傷の一種です。
紙ヤスリはそれらの不均一な表面を“均一に整える”ための道具です。
「粗い傷を細かい傷に置き換えて、最終的に人の目では見えないレベルまで持っていく」という考え方は貴金属に限らず、ほぼすべての金属製品で共通で、金属にかぎらず木工や樹脂、陶器やガラスでも、表面を綺麗にする際には同じ工程を経て研磨していきます。
番手(粗さ)の数字の意味や、段階的に細かくしていく理由
教室で、10回コースでお渡しする紙ヤスリは、#240→#400→#600→#800→#1000
この5種類ですが、販売している紙ヤスリはその上の#1200→#1500まで揃えています。
数字が大きくなるほど、粒子が多くなる。つまり、きめ細かくなります。
紙ヤスリは傷を「整える工程」。「“より細かい傷に置き換えていく作業”」なので、粗いものから順に使うことにより、表面はきめ細かくなり、光沢も出やすくなります。
例えば、表面が荒れているのにいきなりバフで磨くと凹凸をそのままなぞるため、
傷も凸凹も残り、ムラになりやすいです。
番手を飛ばすと失敗するのは、
例えば#240ならすぐ消える傷を、細かい#600で取ろうとすえば、より時間がかかってしまったり、傷の部分だけに集中して余計に凹みを作ったりします。
「時間をかけるところを間違えない」というコツを、紙ヤスリのすり目で覚えることが大切です。
紙ヤスリの代用として、ハンドモーターの先端工具を使う方も多いです。
回転する工具は当て方を失敗するとムラになりますし、当たらない場所もあるので、手作業と並行しケースバイケースで上手に利用しましょう。
平面をピシッと出したい場合は手作業で水平の動きの方がよいですし、
横方向の平面回転の工具を使う場合もあります。
また、キサゲという刃物で傷取りが出来るように訓練しておくと、色々な場面で重宝します。
今回は省きますのでキサゲについては、教室で質問してください。
紙ヤスリをあえて「使わない」パターンとしては、
- 切削跡をそのまま残して“工業的な質感”を出すデザイン
- 叩きっぱなし・鍛造跡を残す質感
- あるいは薬品やエッチングで仕上げてしまう場合
いずれにせよ、「磨く」ことは作品の完成度を上げてくれます。
金属の仕上げについて、過去記事にはこのようなものがあります。
紙ヤスリの前に使うヤスリや、研磨の手順については以下の記事を参考にどうぞ^^
ヤスリを使いこなそう(月曜定期便26)https://www.craftroom.jp/2025/07/07/mon26/
金属の磨きについて(月曜定期便2)https://www.craftroom.jp/2025/01/13/mon2/
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