以前、日本のジュエリーの変遷(月曜定期便7)について書きましたので、
https://www.craftroom.jp/2025/02/17/mon7/
今回は西洋ジュエリーの様式に軽く触れたいと思います。
「アンティークっぽいデザインが良い。ビンテージのビーズを使いたい。」
教室でもよく聞かれる言葉です。
どちらも「古くて味わいのあるもの」という印象で言われていると思いますが、実は明確な違いがあります。
◆ アンティークジュエリーとは
「アンティーク」と呼ばれるためには、製作から100年以上経っている必要があります。
これはジュエリーに限らず、家具や美術品などでも共通して用いられる国際的な基準です。
これらは、当時の手仕事の技術や繊細なデザインが色濃く残っており、「装飾品であると同時に、時代を語る小さな工芸品」と言えます。
◆ アンティークジュエリーの様式と年代一覧
アンティークジュエリーには、その時代ごとに特徴的な様式(スタイル)があります。
以下に主な様式とその年代、特徴を簡単にご紹介します。
※ジュエリーコーディネーターの検定を受検予定の方、試験にも出題されやすい項目ですのでしっかり区別しましょう。(具体的にはテキストで写真と共に、代表的な作家も覚えましょう。)
時代名 | 年代の目安 | 特徴と代表的なデザイン |
ジョージアン期 | 約1714〜1837年 | 手彫りの細工、カンティーユ(線細工)、ロココ様式の影響を受け、優雅で華やかなデザインが特徴 金や銀、ローズカットのダイヤモンド、エメラルドなど |
ヴィクトリアン期 | 約1837〜1901年 | ヴィクトリア女王の在位期間中に流行したスタイル 初期はロマンティックなデザイン(ハート・蛇) 中期は悲しみを表すデザイン(モーニングジュエリー) 後期はアール・ヌーボーの影響を受けたデザイン |
アールヌーヴォー期 | 約1890〜1910年 | 自然をモチーフにした曲線的なデザインが特徴 カメオやエナメル細工が多用 |
エドワーディアン期 | 約1901〜1915年 | エドワード7世の時代に流行したスタイル 繊細で優美なデザインが特徴で、プラチナやダイヤモンドが多用 |
アールデコ期 | 約1920〜1939年 | 幾何学的な模様や直線的なデザインが特徴 大胆でモダンな印象。プラチナ、ダイヤモンド、オニキスなど |
それぞれの時代には背景となる文化や技術の発展があり、ジュエリーのデザインにもその時代の精神や流行が反映されています。
◆ ビンテージジュエリーとは
一方の「ビンテージ」は、製作から30年以上経っているものを指します。
アンティークほど古くはありませんが、すでに時代性が感じられるデザインや技法が特徴です。
ビンテージの魅力は、当時の流行やファッションの空気感が感じられること。
今見ても新鮮に映るデザインが多く、リメイクやアップサイクルの素材としても注目されています。
◆ アンティーク?ビンテージ?見分けのヒントとポイント
「美術的価値としての古さ」を評価するのがアンティーク、
「デザインや時代感を楽しむ」のがビンテージ、というイメージです。
種類 | 年代の目安 | 特徴 |
アンティーク | 100年以上前 | 歴史的背景・繊細な手仕事 |
ビンテージ | 30年以上前 | 流行性・時代の個性 |
「アンティーク」として販売するには、製作年の証拠(刻印や記録など)があると信頼性が高まります。「ビンテージ風」と呼ばれるデザインも多く出回っており、本物との区別を意識しておくとよいでしょう。
◆ 作り手として知っておきたいこと
修理やリメイクを行う際には、当時の素材や技法に配慮することが、価値を保つうえで大切です。
◆ 最後に
アンティークもビンテージも、その時代にしかない空気をまとったジュエリーです。
素材や技法だけではなく、歴史に目を向けることで、ただ古いだけではない、深い魅力に気づけるようになります。
作り手としても、販売者としても、「どの時代の雰囲気を再現したいのか」「どんな人に届けたいのか」を考えるうえで、アンティークとビンテージの違いを知っておくことは、大きなヒントになります。
そして、お客様に間違った情報を伝えないことにも最大の注意が必要です。
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