ジュエリーに色を添える。
まず思い浮かぶのは、メッキや色とりどりの宝石ですが、金属を変化させたり、宝石以外を用いる方法として着色があります。
金属に色を付ける技法の中でも、「七宝(しっぽう)」はとても美しく、歴史ある表現方法です。
似たような見た目のものに、「熱を使わないエナメル」(コールドエナメル)と呼ばれる現代的な技法もありますが、これらは性質や扱い方に違いがあります。
この記事では、七宝とコールドエナメル、それに関連するネイルエナメルやジェルネイルとの違い、そして耐久性についてまとめてみます。
● 七宝(しっぽう)とは?
七宝は、金属の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を乗せ、高温で焼き付けることで色を定着させる技法です。
● コールドエナメル(熱を使わない樹脂エナメル)とは?
七宝に似た見た目を再現できるレジンや2液性のエポキシ樹脂を使った着色技法。
「現代七宝」「コールドエナメル」などとも呼ばれます。
使用する材料:ガラス粉、フラックス、金属(銀・銅など)
焼成温度:700〜900℃程度
特徴:色の透明感や深みが美しく、高級感がある
焼成によってしっかりと定着するため、耐久性が高い
日本やヨーロッパでも長い伝統をもつ技法
使用する材料:エポキシ樹脂、UVレジン、着色剤
硬化方法:自然乾燥、UVライト、2液反応など
特徴:オーブンや窯が不要で、家庭でも扱いやすい
色の自由度が高く、グラデーションや混色も可能
軽く、割れにくいが、紫外線や経年で黄変・変色の可能性あり
🔸 七宝とコールドエナメルの違い【比較表】
項目 | 七宝(伝統技法) | コールドエナメル(現代技法) |
着色素材 | ガラス釉薬 | 樹脂(エポキシ・レジン) |
加熱の有無 | 高温(800度前後)で焼成 | 熱は不要 |
耐久性 | 非常に高い | 紫外線や衝撃にやや弱い |
設備 | 電気炉が必要 | 電気炉は不要 |
質感・風合い | 高級感・深み | カジュアル・自由な色合い |
経年変化 | 変色しにくい | 黄変や退色の可能性あり |
◆ 補足:ネイル用エナメルやジェルネイルとの違いって?
「コールドエナメル」と聞くと、ネイルエナメル(マニキュア)やジェルネイルを思い浮かべる方もいるかもしれません。これらは確かに似たような素材に見えますが、それぞれ目的と性質が大きく異なります。
◎ ネイルエナメル(マニキュア)は…
揮発性の溶剤で乾燥させる、一時的な塗膜
金属に使うとはがれやすく、耐久性が弱い
薄く、こすれにも弱いため、あくまでも短期間楽しむ感覚で使用する
◎ ジェルネイルは…
UVやLEDで硬化させるレジン系素材で、コールドエナメルと非常に近い性質
ただし爪への使用を前提に、しなやかさや柔軟性を持たせた処方
金属などに使うと完全に硬化しにくいことがある
つまり、ジェルネイルは“近縁のコールドエナメル”のような存在ですが、
硬さや密着性の面で耐久性はない
✧ どちらを選ぶ?
作品に長く残る価値を持たせたい → 七宝がおすすめ
自由な色遊びや軽やかさを楽しみたい → コールドエナメルが便利
一時的な着色に使うだけなら → ネイル用エナメルやジェルネイルでも可(ただし要注意)
七宝もコールドエナメルも、「色」を使った表現にこだわるジュエリー制作にとって
とても魅力的な技法です。
用途や素材に合った方法を選ぶことで、作品の完成度も長持ち度もぐっと上がります。
☆9月23日(祝)には、恒例の七宝一日体験受講を開催します。
初めての方はもちろん、今までに受講された方も復習としてどうぞ。^^
今から事前に準備を始めれば、貴金属の時間に土台を作って準備することもできますね。
その場合は七宝の土台として使うための条件があるので、お尋ねください。
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